先日、いじめ増加の傾向についてニュースで取り上げているのを見て、ある衝撃的な映画を思い出しました。映画のタイトルは『BULLY（＝いじめっ子）』。いじめから生じた実話を基に、その衝撃の事実を描いた2001年に製作された作品です。残念ながら近年日本でも、いじめが原因の事件が後を絶たなくなってしましましたが、この作品で取り上げているいじめ問題では、最終的に犠牲になったのはいじめられる側ではなくいじめっ子のほうでした。

原作はジム・シュッツ著「なぜ、いじめっ子は殺されたのか？」

あらすじ

心がちぎれた若者が取り返しのつかない事件を起こしてしまった…

1993年7月14日、南フロリダで7人の高校生による殺人事件が起きました。この信じがたい出来事のニュースは「ボビー・ケント殺害事件」と称され、あっという間に全米を駆け巡りアメリカ中に衝撃が走りました。

―――ボビー（ニック・スタール）とマーティは幼なじみ。一見、親友同士に見えるが、ボビーは成績優秀な高校生、一方のマーティは高校の落ちこぼれ、実はマーティーはボビーに一方的に支配されていた。暴言を浴びせるのは日常茶飯事、時には暴力も振るうありさまだった。そんなある日、2人はバイト先のスーパーに訪れた女の子、アリ（ビジュー・フィリップス）とリサ（レイチェル・マイナー）をデートに誘う。そしてボビーはアリと、マーティはリサと交際を始める。交際をしていくうちにリサはボビーのマーティに対する異常な“いじめ”に気付きボビーに怒りを感じるようになる。さらにボビーはアリとリサにまで暴力を振るうようになる。ボビーへの憎しみがピークに達し、リサの中に“殺意”が芽生える。そしてマーティに驚くべきことを口にする…

率直に言ってしまえば、感情移入できるところは1つもなければ、監督はこの作品を通して何を伝えたいのかも感じとりにくい作品。しかし、考えさせられる点はいくつもあります。いじめられる側は人を1人殺してからはじめて正常な思考になるわけですが、殺害を企てている間は“人の命を奪う”ということに何の疑問も抱くことはなかったのか。それぞれの両親は自分の子どもたちの様子がおかしいことにまったく気付いていなかったのか。などなど・・・

どれをとっても疑問が残ります。

なぜ、人は人を歯止めが効かなくなるほどいじめたくなるのでしょうか。“いじめ”がなければ、この残忍極まりない事件もきっと起こっていなかったでしょう。

人をいじめる人は寂しさや自信のなさからそういう行為にいたるようにも思えます。人をいじめることで、自分の存在感を確認することしかできないのではないでしょうか。

そこで問われるのはやはり親の責任だと思います。多かれ少なかれ、育った環境が影響していないとも言いきれません。この事件が起きたのは1993年ですが、 現状を見ても悲しいかな、“いじめ”という行為はきっと今後もなくなっていくことはないのかもしれません。人間であるがゆえのことかもしれませんが、少なくとも、自ら起こした行動には責任、そして反省する心を持つことを大人が教えてあげる必要があるのではないでしょうか。いじめの問題についてはまずは大人が理解するほうが先決かもしれません。

ボビーと幼なじみだったマーティ・プーチョ本人

【画像】wakadoより

何とも言えない切なさが残ってしまう映画ですが、出演している当時の若手俳優の演技はリアルそのもの、大したものです。そして、DVDならではの特典、監督や俳優のインタビューも合わせて観ると、自分なりにこの映画を解釈したいと言う方は助けになるかも知れません。

一部耳を疑ってしまうような、しかし茶目っ気たっぷりの若手俳優の笑える（苦笑いかも）インタビュー映像（いわゆるブラックジョークというヤツです）もあるのでDVDを借りた方は余すところなく観るのを忘れずに。

参照元：TOP 10 FILMS.CO.UK