J.Lo、ゼンデイヤ、レイチェル・マクアダムス…若干25歳にしてハリウッドAリストセレブから指名されるデザイナーとなったのはオーガスト・ゲティ。苗字を見てピンと来た人もいるかもしれない。彼は石油王ゲティ家のひ孫であり事実上若き当主になる。

石油王Ｊ=ポール・ゲディって？

オーガストの祖父はジャン・ポール・”ユージン”ゲティⅡ世。石油王ジャン＝ポール・ゲティの3男で、最初の妻で元水球チャンピオンゲイル・ハリスとの間に生まれた末の娘アリアドネがオーガストの母です。

世間を揺るがせ映画にもなった『ゲティ家の身代金』はオーガストの叔父、アリアドネの兄である長男・ジャン・ポールⅢ世が誘拐され莫大な身代金を要求されたにも関わらず、支払おうともしない創業者のゲティの対応が避難の的となりました。

ゲティ家は呪われている？

ケネディ家ほどではありませんがゲティ家も呪われているといっても過言ではありません。中東からタンカーで石油を米国に運び一代で財を成した初代ゲティは、守銭奴だった上、自分の息子や孫に『自分でビジネスを思い付くように』厳しく接しました。

身代金誘拐事件の被害者となったゲティⅢ世は、ヒッピーになりドラッグ中毒になった後、25の時自殺を謀り車椅子となり54で病死するまで廃人同然だったそうです。

初代ゲティには5人息子がいて、三男ユージンの息子でゲティⅢ世の弟は写真会社『Getty Images』の共同創業者です。次男ロナルドは免税店DFSグループの創業者、四男ゴートンは石油事業をテキサコに売却などビジネスで成果をあげています。

その一方で謎が多いのもゲティ家です。

創業者の5男ティモシーは脳腫瘍で12歳の若さで夭折。四男ゴートンの息子は2人いますが次男・アンドリューは’15年4月にハリウッドの高級住宅地の浴室で謎の死を遂げていますし、長男でミュージシャンのギルバートもテキサスのホテルで死んでいるのが見つかっています。

この家の事しか知らないから重荷はない

世間の目からみれば呪われた富豪のゲティ家ですが、オーガストは『この家しか知らないから重圧は感じたことがない』と言います。現在彼のブランドをCEOとして統括しているのは母親のアリアドネ（写真中央）。娘のナタリア（ナッツ）・ゲティ（写真左）はカジュアル・ブランドを展開するデザイナー。オーガストはゲイ、ナッツはレズビアンで2人は富豪としての重圧以上に、LGBTの権利を獲得する為に活動したいと言っています。

ゲティ家の出身だと言わなかった母

オーガストの母アリアドネは、2人の子供を育てる時に『ゲティ家の子供だと意識させないようにした』と言います。

街にゲティ家のモニュメントがあってもあえて素通り。当時結婚していた俳優ジャスティン・ウィリアムズの名前を名乗っていたのだそうです。『その方が子供たちは自分たちの好きなことを出来ると思ったのよ。』

そして幼いオーガストはテーブルの上にあったフォークに食卓のナプキンで洋服を作り始めたのだそうです。やがてフォークはバービー人形になりアリアドネはオーガストやナッツの興味が赴くままにファッションブランドを立ち上げさせたと言います。

独学で学んだファッション

オーガストは独学でファッションを学んだというのですから驚きです。『ファッションのインスピレーションは母や家の交友関係から全て学んだよ』というオーガスト。母アリアドネがゲティ家と言わず、意識させなくても、どこかで彼は学んでいたのかもしれません。

オーガストは19の時にNYでデビューし、コレクションを発表。続いてパリでコレクションを発表するとオートクチュールの目に留まりパリに留まることになった。

『もう少ししたらパリにアトリエを構えなきゃいけなくなるかもね』’20年現在、彼のアトリエは米国にあるが、彼が目指すのはクリスチャン・ディオールの様に40代前半で世界に名だたるブランドを確立することだそうだ。