98円のトマト缶を支えるアフリカ系農民たち・伊の経済奴隷の現実
’20年初夏、緊急事態宣言が発令された時スーパーの棚からパスタや油は消えたがホールトマトの缶が消える所までいかなかったはずだ。
その陰にあるのはホールトマトの生産の8割を占めているイタリアの生産と流通にある。イタリアのトマト缶を生産するトマト農家を支えているのは半世紀前の様に貧しいイタリア人ではない。白人の農場主やブローカーに搾取されたアフリカ系なのだ。
かつてのリゾート地は経済奴隷の溜まり場に
イタリア南西部、伊を長靴に例えると『かかと』にあたる部分に位置する州がバシリカータ州とプーリア州だ。両方ともブドウの産地として知られ、名前の知られたワインを毎年作出している。
歴史的建造物も多く、プーリア州はバロック建築物の多さから、観光客も多い。バシリカータ州は’80年代までは国内の富裕層のリゾート地も数多くあった。この2州が様変わりしたのは’80年代後半からだ。
’80年代後半から’90年代にかけてブルガリアやハンガリーなどの東欧系移民がドイツからイタリアに流れてきた。’05年頃から目立つのはアフリカ系の不法移民で、家族に仕送りをする為に流れ着いた経済難民たちである。
バシリカータ州では毎年初夏になると約5万の経済難民労働者が元締めの所に仕事を貰う為に、湾岸に船でたどり着くが、地元の警察は見て見ぬふりをしている。
『30年もホールトマト缶の値段が変わらないっておかしいと思わないのか?砂糖や大豆は値上がりしているのに。』こう言うのは伊労組『Flai CGIL』組合長のダニエレ・ラコヴェリだ。
日に12時間、週3日働いて仕送りが出来ない
ホールトマト缶を作る為のトマトの収穫は8月の炎天下で行われる。ガーナ、ブルギナファソなどアフリカ系の季節労働者が夜明けから日没まで収穫する。
『日に12時間働かされる。夜明けから日没までだ。部屋は共同でコンクリートの床の上で他の労働者たちと雑魚寝。コロナ対策?マスクも何もないよ。シャワーすらない。お手洗いもないからな。』ガーナから来たジョセフは諦め気味だ。ここに来た理由は1つ、金を稼げるからだという。
ブルギナファソから来たアーメルはこう語る。『仕送りをしようにも元締めに何もかも吸い取られてしまうんだ。僕たちの手元に残されたのは必要最低限の金のみ。トマト畑の収穫が終わるとオレンジ畑に移るんだが、オレンジ畑は14時間働かされるらしい。もっと酷いよ。』
彼らはイタリア人の平均賃金の時給9ユーロ(1130円)の半額以下で働かされる上、そこから家賃として8割近くを天引きされているというのだ。
イタリア人労働者がロックダウンで仕事をしていなかったとしても、ホールトマトが世界中の流通に乗り続けた理由は、現地のアフリカ系違法労働者にある。
元締めは白人とアフリカ系の格差社会
イタリアの経済農業難民を生み出す元締めは白人(capo bianco)と、アフリカ系の元締め(capo nero)が居る。白人の元締めは不労収入を得る農場主の事だがアフリカ系の元締めは『労働者の世話役権ブローカー』だ。
アフリカ系の元締めは白人の元締めの要望に応え、母国や経済難民の溜まり場である波止場に赴き、労働力となる母国の人間を『労働者』としてあっせんしたり、寝る場所を提供する。
『俺たちが週3日働いて51ユーロ(6566円)貰ったとするだろう。そのうちの31ユーロ(4000円)は農場主や管理人の白人の元締め。9ユーロ(1200円)は俺たちと一緒に働くアフリカ系の元締めの懐に入る。残りがオレたちの3日分の稼ぎだ。』先程のアーメルはぼやく、それでも彼は元締めを告発しようとも声を上げようともしない。
アーメルだけではなく殆どの季節労働者たちは理不尽に劣悪な環境で働かされているのに暴力に怯え暮らしている。中にはロシアンマフィアの元締めに時給3ユーロと騙されたナイジェリア出身の労働者も居る。
『イタリアは僕たちを機械としか思ってない。だってそうだろう。300kg以上入る木箱に40度を超す炎天下でトマトを手摘みで摘み続けて実際は1日5ユーロしか貰えないのはおかしいじゃない。』
本当の脅威は商社よりも中国
経済移民にとって脅威なのは中国の存在だ。自分たちの労働賃金を安く買い叩き続けた商社や工場よりも脅威に感じているのは農業に国策をシフトした中国の存在である。
既にワインの生産をテコ入れしている中国はイタリアにとって価格競争の面では驚異的問題だ。それで人件費も国策で抑え込まれたらたまったものではない。
バブル崩壊、リーマンショックを過ぎてなおかつ、ホールトマト缶の値段は据え置かれたままだ。その陰にはイタリアの未だ正されない不法移民問題があった事をわすれてはいけない。
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