ウディ・アレン監督のロマンティック・コメディ『ミッドナイト・イン・パリ』の紹介です。ウディ・アレン監督にとって42作目となる本作は、全米で大ヒットとなり、公開当時自己最高の興行成績を記録し、「パルプ・フィクション」でおなじみのあのクエンティン・タランティーノ監督が選んだ「2011年映画ベスト11」では見事第1位に輝いた作品です。第84回アカデミー賞ではオリジナル作品賞を受賞しました。

あらすじ

ハリウッドの売れっ子脚本家のギル（オーウェン・ウィリソン）はお嬢様育ちの婚約者イネズ（レイチェル・マクアダムス）と憧れのパリに意気揚々とやってきた。脚本家として成功しているギルだったが、実は作家への夢を捨て切れずにもいた。そんな彼が多くの芸術家や文豪たちに愛されたパリという街の黄金時代に想いを馳せていると…そこは1920年代のパリだった。

ヘミングウェイやピカソなどの伝説の芸術家たちが生きる1920年代にタイムスリップするという設定のこの作品は、歴史上の偉人が多数登場します。それを演じる俳優陣もまた豪華な顔ぶれ。スペイン生まれのアメリカの画家サルバドール・ダリ役に「戦場のピアニスト」でアカデミー主演男優賞を獲得したエイドリアン・ブロディ、パブロ・ピカソの愛人役に「TAXI」シリーズで知名度を上げ、「ビッグ・フィッシュ」でハリウッドデビューを果たしたフランスの女優マリオン・コティヤール、そして何と、ニコラ・サルコジ前フランス大統領夫人としても知られるイタリア出身の歌手カーラ・ブルーニは美術館のガイド役で出演しています。

個人的に私はウディ・アレンの作品が好きなのでぜひ見ていただきたい作品の1本です。時代背景といい、キャスティングの豪華さといい、非常に見ごたえのある作品です。数々の偉大な芸術家たちと夢を諦めきれない主人公のギルとの絡みをウディ・アレン独特のユーモアのセンスで描いています。ウディ・アレンは心理描写をモチーフとしている作品が多いので、見る側も知らぬ間に感情移入してしまいます。

また、舞台がパリというのも魅力のひとつ。オープニングで約3分もの間、パリの美しい風景が映し出されるそうなのですが、ウディ・アレン監督はあるインタビューでそのことについて「アートと見なして表現しているのか」と訊かれ「そうなんだ。パリという都市は究極のアートと言えるだろう」と話しており、映像の美しさも堪能できます。

余談ですが、この『ミッドナイト・イン・パリ』はアカデミー賞脚本賞を受賞しましたが、アレン監督、受賞式は欠席。ニューヨークの自宅でNBAのオールスター戦をテレビで観戦していたんだとか。また、過去にも受賞作品がありますが、アカデミー賞が嫌いなのか授賞式は姿を現さなかったようです。「アニー・ホール」で作品賞を受賞した時は、ニューヨークのマイケルズ・パブでクラリネットを吹いていたらしいです。そんな茶目っ気たっぷりのウディ・アレン監督の大ヒット作『ミッドナイト・イン・パリ』。おとぎ話の世界に酔いしれたい人にぜひおすすめしたい作品です。